百田直樹さんの新刊の『日本国紀』がAmazonの本部門でランキング1位となっています。※2018年10月現在
このランキングは売れ筋ランキングで実際に売れている本で1位なんですね。
しかしこの本はまだ全部完成していないそうです。
ですから予約販売の段階で買って読んだ人はいません。しかし1位です。これはこれで凄いことですよね。
日本国紀がAmazonで1位の理由とは?
ハードカバーで1,944円もするこの本がAmazonで1位を取っている理由ですが、ありきたりな話をすると「保守ブーム」が要因かもしれません。
最近では新聞マスコミなどのいわゆる左派・左翼的な論調にうんざりしている人たちが増えているのは事実です。
「朝日新聞は嘘だらけだー」といった声も聞かれますよね。実際に朝日新聞も過去の記事について謝罪していたりしますので、今まで権威とされてきたものに対する反動が今の保守ブームを牽引しているのです。
その保守ブームの中心の一人がこの百田直樹さんかもしれません。
既存の百田直樹ファンが買っている説
次に現実的な話を一つしておきます。
この百田直樹さんという方はかなり書店を回って直にファンと接している作家であるという話があります。いわゆる書店営業という手法なのだそうですがこれをかのホリエモンも見習って地道にやっていたことがあるそうですよ。(ホリエモン「ベストセラーはこうしてつくられる!」より)
つまり以前から地道にファンを増やしてきた百田直樹氏はファンが多いので新著を出すと売れるという訳です。確かにかなりの人気作家のようです。
だから売れて当然だから別に驚くことではないということです。
内容はトンデモ本の可能性も…?
ただしこの『日本国紀』という本は百田直樹氏が得意?な小説ではないようです。
『日本国紀』は、日本を褒め称えただけの本ではありません。
日本と日本人の素晴らしさを書いていますが、ダメなところや情けないところも書いています。書いていて苦しい時もありました。
しかし読み終えた後には、誰もが、日本に誇りを感じ、日本人であることに無上の喜びを覚えると信じています。— 百田尚樹 (@hyakutanaoki) 2018年10月18日
『日本国紀』の内容は日本人の良さや日本の歴史について著者が考えたことをまとめた本であると言えそうです。
ただ、内容的には「これはどうなんだろうか?」というところはあります。例えば次のような著書紹介があります。
内容紹介
私たちは何者なのか――。神話とともに誕生し、万世一系の天皇を中心に、
独自の発展を遂げてきた、私たちの国・日本。
本書は、2000年以上にわたる国民の歴史と
激動にみちた国家の変遷を「一本の線」でつないだ、
壮大なる叙事詩である!当代一のストーリーテラーが、
平成最後の年に送り出す、日本通史の決定版!
「神話とともに誕生し」という一節ですがこれは日本という国家を指しているのだと思います。
確かにそういう側面はあるのかもしれません。しかし現代の戦後日本という国家に直接関係がないというかこじつけた話に思えます。「神話から繋がって、今がある」と言われても神話は神話でありそれはおとぎ話なのです。
それをゴリ押ししておとぎ話を真実として思い込むのは自由ですが私からするとそういうのは思考停止に思えます。
また現在の日本国憲法にもそのようなことは当然触れられてはいませんのでやはりこれは著者の思想信条、宗教的な国家観であるということが言えます。
こんなことを言っていると百田直樹さんのファンから叱られそうですが、百田さんのような宗教観がない側からすると残念ですがそういう見方になってしまいます。だって荒唐無稽ですから、神話とか万世一系とか…。
またこういう宗教的な観念でもって「日本」を押し付けるのは宗教の押し売りに似ています。
著者の百田直樹氏は頭の良い人でしょうからビジネスとしてそれを利用しているのは分かりますが、一方でこういった怪しげなものをベースに「保守」と言っている人もいそうで怖いのです。
宗教的なものを押し付けてはいけない
最近の保守ブームは上記のような宗教的な観念が牽引している側面もありそうです。
例えば百田直樹氏も「万世一系の天皇を中心に」と言うわけですが、さすがにマトモな大人は誰も最初の神武天皇から現在の皇室まで血筋が繋がっているとは思っていない訳です。思いたければ思えば良いんだけど…という程度の話です。
ですから「万世一系の天皇を中心に」というのは思想信条や宗教であり、そう思いたい話にすぎません。
(なんて言ったらまた叱られるでしょうが…)
また皇統についても途中で途絶えたりしているという指摘や学説もあり万世一系という話はいずれにせよ実在していない、証明できないものであると言えます。もちろん万世一系ではないということも証明できそうもありませんが、(安倍総理もよく言われるようですが)「ないものは証明できない」のです。
『日本国紀』は百田直樹氏の(ファンが期待する)日本観
『日本国紀』という本の内容はまだ読んでいませんがおおよその予想は付きます。
そもそもまだ本ができていない段階でAmazonの本部門全体で売上1位なのですから「百田氏のファンが期待する内容」なのです。ファンが買っているから1位なのです。
百田直樹さんのファンがこういう本が読みたい!待っていた的な内容と言えば大体分かると思います。
それがプロの作家の仕事だと思います。ファンが期待する内容、裏切らない本を書くことがベストセラー作家の秘訣でしょう。